2016年07月

2016年07月30日

これまでセレクトセールの高額馬レビューをしてきましたが本日はちょっとお休み。今シーズン初の重賞結果レビューをやっていきます。
対象は先週7/25に行われた、GⅢ函館2歳S。勝ったのは、マル外の2番人気レヴァンテライオンでした。
このレースには自分のPOG指名馬モンドキャンノが出走し、1番人気に推されましたが残念ながら及ばず2着…。身内POGの初重賞制覇は次回以降に持ち越しで悔しい思いに枕を濡らした…というのは冗談ですが(笑)、レース回顧をしていこうと思います。

レースは、2歳馬のレースらしくバリンジャーなどが出遅れバラバラのスタート。そんな中、レヴァンテライオンは絶好のロケットスタートを決めます。
人気薄のザベストエバーが二の足で先手を取るとレヴァンテライオンは3番手に控える形。モンドキャンノも徐々に進出しますが戸崎Jが抑えて5番手で我慢。
戦前の大方の予想通り前半3F通過は33.5のハイペースですが、4コーナーではバツグンの手応えのレヴァンテライオンが外から仕掛け早くも先頭に並びかけます。
一方のモンドキャンノは馬群に包まれる形で直線外に出す際にロスが。
直線では早め先頭のレヴァンテライオンをモンドキャンノが追い詰めにかかりますが、直線短い函館で外に出す際のロスも響き半馬身差まで差を詰めたところがゴールでした。

レースは前後半3Fが33.5-35.7、勝ちタイム1:09.2のレコード決着。芝は速い時計が出ていたとはいえこのタイムは立派ですね。
久々重賞勝利の三浦Jは前立腺がんで入院中の矢作師に送る勝利となりました。
人気馬同士の決着とはいえ6月勝ち上がりの2歳馬ランキングで☆6.5を付けたレヴァンテライオンと☆7を付けたモンドキャンノの1,2着で当ブログ的にはいい結果だったんですが…。
やはり身内POGでの重賞初制覇ならず、の結果は悔しいですわ。

改めて、勝ったレヴァンテライオンの血統など見ていきます。
父は昨年の米3冠馬American Pharoahを輩出したPioneerof the Nile。母は米11戦4勝で重賞勝ちはありません。
母父はBCクラシックを勝ったデピュティミニスター系の名馬Ghostzapperで、クロスをみてもIn Realityの6・5×5、ミスタープロスペクターの5×6、ボールドルーラーの6×6とバリバリの米国血統。ただやや代が離れているので、それほど自己主張していないですね。
配合的ポイントは①父系祖父エンパイアメーカーの持つIn Realityクロスの継続、②ボールドルーラークロスから派生したナスキロ血脈の補強、③パワーの補充、④欧州血脈のサポート、の4点があるかと。

①は海外でGⅠシューメイカーマイルSなど重賞4勝のMidnight Stormも持っているクロス。また、ホーリーブルSなどGⅡ2勝のCairo PrinceはIn Realityの父であるIntentionallyのクロスを持っているように、米血脈の持つパワーを大きく強化する効果が。
②は父の持つKey to the Kingdomを母方のStar Spangled、Sir Ivorで補強する形で日本の芝向きの末脚のキレを強化。ハイペースのこのレースを3番手から押し切ったように外回りの究極の瞬発力勝負が向くかはわかりませんが、洋芝ならレコード決着でもやれるスピードがあるというところを見せました。
③は母父Ghostzapperでダート向きのパワーと頑強さ、母母父Dynaformerは中山得意なロベルト系で洋芝をものともしないパワーを補強。GⅡサマータイムオークスを勝ったJojo Warriorもデピュティミニスターとロベルトの組み合わせを持っています(さらにこの馬はミスプロクロス+ブラッシンググルーム持ちもレヴァンテライオンと共通)。
また、さきほど名前が出たMidnight Stormはデピュティミニスターこそ持たないもののDynaformerと3/4同血のDarby Creek Road持ちですね。
④ですがレヴァンテライオンの母Ghostly Darkness は米国血統中心の配合なんですが、代を遡るとTudor Minstrel、Olympia(2本)、Alibhai、Khaled といったハイペリオン系中心の欧州血統が多いことに気が付きます。
これがPioneerof the Nileの持つハイペリオン系血脈のOlympia、Swaps、Alibhaiクロス、Atlasと結びついてスピードだけでなくスタミナ、底力を補強しているんです。
これは米3冠馬American Pharoahの配合でも同様のことが見て取れて、過去の記事でも取り上げました。
特にAmerican Pharoahの2代母Exclusive RosetteはHeliopolis5×5・6・6という凄い血統でした。

こうするとレヴァンテライオンは父の成功パターンを見事になぞった配合だと言えそうです。
ま、ここ2戦で見せたパフォーマンスからはスピードと洋芝適正は十分確認できましたがマイル以上の距離で瞬発力勝負となった際にどうかはまた改めてレースを見てみる必要があるかと思います。
血統からは米国馬らしくスピードにモノを言わせて押し切るタイプって感じがしますが…。

さて2着に敗れたモンドキャンノですが、外枠から好スタートを決め終始スムーズな競馬だった1着馬に対し競馬っぷりは内枠でスタート後モマれ、掛かったところをなんとかなだめ、直線では外に出す際にロスあり…と不利な場面が多々ありました。
そんな中でも本賞金は加算できたワケで、今後の展望としては悪くなかったんじゃないでしょうか。
1,2着馬ともに放牧に出たようですが、再戦の際はモンドキャンノが最先着してほしいですね。


2016年07月24日

先週から開始したセレクトセール2016の高額馬レビューですが、まぁ今年は1億円超えの馬の数が多い…。
まだ全体の1/4も終わっておらずいつまでこれやるの?という感じですが(笑)がんばっていきます。

1歳馬セッション、5頭目の高額落札馬となったのはこれまたディープ産駒の牡馬、そして1億7000万円で落札したのは里見治氏というシャムロッカーの2015(牡)です。
この馬の全姉は実はPOG指名を狙ってたんですが、2年前のセレクトセールでカタールのファハド・アルターニ殿下の代理人であるDavid Redvers氏が落札(9400万円)。すでに海外へ輸出されてしまった…ということで断念した経緯があります。

母のシャムロッカーは南半球生まれでも珍しいニュージーランド産馬で、オーストラリアを主戦場として現役時代を送り、18戦4勝。
勝ち星自体は少ないのですが、牡馬相手にGⅠオーストラリアンギニー、AJCダービーの2勝を挙げオーストラリア3歳牝馬チャンピオンとなっています。
母父はラストタイクーン系O'Reilly。現役時代6戦4勝、マイルGⅠベイヤークラシックとスプリントGⅠのWRCテレグラフハンデを勝ったニュージーランドの年度代表馬です。
O'Reillyは種牡馬になってからはニュージーランドのリーディングサイアーにもなり、南半球で数々のGⅠ馬を送りました。母父としても数少ない産駒の中からディープ産駒でGⅢラジオNIKKEI賞を勝ったファイナルフォームを出していますね。

母の配合は母父O'Reillyも母母父Blues Travellerもノーザンダンサー×異系という配合。さらに、父系はノーザンダンサー×ナスキロ・ロイキロという部分も共通しています。
なので、全体的にはノーザンダンサー4×5・6クロスを発展させたラストタイクーン≒Bluebirdの2×3相似クロス持ち(ノーザンダンサー・ナスキロ≒ロイキロ・トムフールが共通)と言えそうです。

さらに本馬の配合で言えばノーザンダンサー5×5・6・7クロスに、Sir Ivorの5×6クロス持ち。
母のラストタイクーン≒Bluebird相似クロスを発展・継続させ、Alzao≒ラストタイクーン≒Bluebirdの3×3・4という相似クロスが最大の配合のポイントでしょう。
母は他にもディープと相性がいいAureole持ちで、その仔Authiはディープの祖母Burghclereを刺激する血統構成(Donatello、ハイペリオン、Court Martialが共通)。
ディープのキレを強化しつつ、スタミナとパワーがうまく融合すればクラシックの舞台を目指せる馬になるんじゃないでしょうか。


まだまだディープ産駒の高額落札ラッシュは続きます。6頭目は(株)ダノックスにより1億6000万円でお買い上げとなったゼラスキャットの2015(牡)

母は米で5戦1勝と目立たない成績しか残していませんが、その父がBMSとして非常に優秀な成績を残しているストームキャットというのがポイント。特にディープとの間ではすでにニックスとして認知されている配合です。
きょうだいは半姉Tapicat(父Tapit)がGⅢフロリダオークス勝ち、デビューした馬4頭中3頭が勝ち上がっています。

ディープインパクト×ストームキャット配合の成功パターンの一つに、母がレイズアネイティブ×パワー血脈を持つというのものがあります。特に欧州血統、ハイペリオン系の血を持っているとベター。
ラキシス・サトノアラジンきょうだいの二代母Foppy DancerはFappiano×ニジンスキー。リアルスティールの二代母Monevassiaはミスタープロスペクター×ヌレイエフ。アユサンの二代母Buy the FirmはAffirmed×Intentionally×Your Host。
この馬の二代母Trail Robberyは、Alydar×No Robbery(3代前がハイペリオン)という構成で、一応条件は満たしています。

ま、母自身はネイティブダンサー5×4とナスルーラ5×5クロスを持ちややスピード血統が勝っている部分はありマイラーという感じはするものの、Storm BirdとAlydarの間でネイティブダンサー、Bull Leaクロスが発生し米パワーの補強はありそうです。


さて、数時間ほど前に現2世代の初重賞、GⅢ函館2歳Sが行われました。
勝ったのは二番人気のレヴァンテライオンで、一番人気に推された自分のPOG指名馬モンドキャンノは惜しくも2着…。
なかなか身内POGでの初勝利は遠いなぁ。。。できれば、この結果も近日中に回顧しようかなと思います。


2016年07月17日

昨日から始めたセレクトセール2016の1歳馬セッション高額馬レビューですが、今日2日目もさっそくやっていきます。

3頭目の高額落札馬となるこの馬もディープインパクト産駒、ドバイマジェスティの2015(牡)です。
2億2000万円でこの馬を競り落としたのは、(株)ダノックス。株式会社オービックの会長である野田順弘氏の馬主名義ですね。
個人的なことですけど、今IT系の仕事をしているので会社名は仕事の中で聞くことがあります。
その野田順弘氏ですが昨年は妻である野田みづきさんと合わせて25頭、総額約13億円を使ったことでも話題になりました。
セレクトセールでたくさんお金を使うことで有名な馬主さんと言えば今は真っ先に里見治氏の名前が上がりますが、この方も今年1日目だけで5億円ほど使われているんですよ。。。妻の野田みづきさんも合わせれば初日で6億8500万、2日目間合計だと11億5500万円、去年と同じ位の規模の額ですね…。夫婦そろって共通の趣味があるのはいいことだと思いますが、それにしても使う金額の規模が違い過ぎる…。

閑話休題。
この馬は、全兄が今年のドラフトでも人気を集めたアルアインということで、名前にピンと来られた方もいるハズ。
母は米で34戦12勝、5歳時に本格化し引退戦となったGⅠ・BCフィリー&メアスプリントで2.1/4馬身差の完勝を収め、2010年エクリプス賞最優秀短距離牝馬に選出されています。
ディープと言えば自身は筋肉量が少なく柔らかさとバネが持ち味の中距離~クラシックタイプなので、相手となる牝馬は筋肉量豊富でスピードのあるスプリンター~マイラータイプがいい、というのがすでに定説化。
そこでこの馬の母は相手としては非常にいい適性がある、と言われているワケです。

ただ、血統そのものを見ていくと評価は難しいところです。
ドバイマジェスティは血統の7/8が米血で、2代母父His Majestyのみが欧州血統に分類されます。
とくに自身A.P. Indy系Essence of Dubaiの産駒でダート血統・スピード血統が多く、中でも代が遠いとはいえ母父内Bold Rulerの6×7×7にNashuaの6・6×5クロス持ちと、ナスルーラ血脈が濃いんです。
ディープ×A.P. Indy系の母(しかもナスルーラが濃い)ということでいえば昨年ホープフルSを勝ったハートレーが思い浮かびますが、あの馬の母は個人的に疑似ストームキャット多重配合によるディープのAlzao刺激がキモだったと思います。その意味でこの馬の母はノーザンダンサー系が7代前にようやくニジンスキーの名前が見える程度。
ディープと相性のいい血が少ないのも気になる所です。
馬体の見栄えがいいのは認めますが(全兄アルアインがどんな成績を残すかはあるにせよ)個人的にたぶんPO指名はしないんじゃないかなぁ…という気がしています。
ま、これまで母父A.P. Indy系のディープ産駒って数が少なく傾向がつかめない部分もありましたし、今後数が増えるに従ってどんな配合がいいのかというところも見えてくるハズかと思います。


4頭目はまたまたディープ産駒、ベネンシアドールの2015(牡)
落札したのは(株)ドリームファームで、価格は1億9000万円。(株)ドリームファームさんって全く情報がないんですが、いきなり2億近いお金を出すあたり相当な資金力がある方が代表のハズ。。。ググっても農業関係の会社ばかり出てきてしまって、謎が深まるばかり。どなたかご存知の方っているんですかねぇ…。

さて、本馬のプロフィールですが母は不出走ながらトゥザヴィクトリーの半妹という血統背景の持ち主。
初仔の全姉デニムアンドルビーはローズSなど重賞2勝、さらにジャパンカップと宝塚記念でGⅠ2着2回を記録しています。
トゥザヴィクトリー自身はキンカメと配合されトゥザワールドなどを産んでいますから、フェアリードール系のサンデー、キンカメとの相性、そして日本への適性は折り紙付きですね。

配合はディープ×キンカメといういわゆる「金子配合」。数は少ないもののすでに全姉含め優秀な結果を残していて、デビューした7頭中5頭が勝ち上がり、全馬2勝以上で3頭がOPクラスというとんでもない成績です。
ちなみにディープ×キングマンボ配合は個人的にニックス認定しています。

細かく見ていくと、まず第一に「ハイペリオン」がキモになっている配合なのかと思っています。
キンカメがハイペリオン×Lady Josephineの組み合わせのクロスと相性がいいのはこれまでも書いてきた通りで、実際近親のトゥザワールドは結果を残しています。
3代母フェアリードールはハイペリオン5・5×5・6・6というクロスの持ち主で、フォルリ、Tudor Minstrel、Your Hostと3本のハイペリオン×Lady Josephine血脈を持ちそれはキンカメのフォルリ、Tudor Minstrel、Hornbeamと結びつき推進力のあるパワースピードを強化(この組み合わせは一部ハイペリオン×ナスルーラの組み合わせでもありますが)。
そして、今あげた血脈はこれまたハイペリオン×Lady Josephine血脈の集合体ともいえるディープの2代母Burghclereを刺激するんですよね。これはディープ産駒の成功パターンの一つ。
そして第二はキンカメ自身の成功配合パターンの一つである「ラストタイクーンの増幅」。これはノーザンダンサー×ナスキロでしなやかさ、斬れ味を強化するやり方ですがこれがディープのキモである「Alzaoの増幅」と共通していて、ラストタイクーンがAlzaoと結びつくんですよね。

(株)ドリームファームは謎なものの(笑)、配合的には間違いなく大きなところを目指せそうな1頭です。


2016年07月16日

7/11,7/12の2日に渡り北海道・苫小牧のノーザンホースパークで行われた日本最大のセリ市、セレクトセール2016
今年はセール出身馬のGⅠ制覇がないものの、セレクトセール2013当歳馬セッションで2番目の高額となる2億3000万円で落札されたサトノダイヤモンドがダービーでハナ差2着。
今年のPOGでも昨年のセールで4番目の高額となる1億9500万円で落札されたキングスローズの2014が人気していたように、大注目です。

始まる前はイギリスのEU離脱など世界的な経済の停滞からセールもどうなるのか心配されましたが、エイシンヒカリなど日本馬の海外での活躍が火付けとなったか?売り上げは過去最高額を更新。
初日の1歳馬セッションは昨年を10億以上上回る81億3060万円で1億超えの馬も昨年を6頭も上回る14頭!
当歳馬セッションが昨年を8億円上回る68億1150万円、1億超えの馬が昨年を2頭上回る9頭!
売り上げ総額はレコードとなる149億4210万円と、もう自分のようなパンピーからすると異世界の話という感じですね。。。
特にディープインパクト祭り、ノーザンファーム祭りに新規馬主さんと海外勢の参加がこの状況を呼んでいるとは言え、やや異常な状況と思えなくもないですが…。

ま、本ブログではそれは置いておいて(笑)昨年に続いて高額馬レビューをしていきます。
…っていうか、今年は合計で23頭もレビューしなきゃならんの!?なんとか頑張ってみますか…(笑)。

まずは初日の1歳馬セッション編から始めます。
1頭目に取り上げるのは、最高額となる2億6000万円で(株)KTレーシングに落札されたオーサムフェザーの2015(牡)。当然のごとく、ディープインパクト産駒です(笑)。
(株)KTレーシングは、新興の馬主さんで代表が黒川哲美さん?のようですね、いきなり最高額落札とは恐れ入ります…。

母のオーサムフェザーはアメリカで走り現役時代11戦10勝。デビューから10連勝でうちGⅠはBCジュヴェナイルフィリーズとガゼルSの2勝を挙げ、米エクリプス賞2歳牝馬チャンピオンに選出されています。
また、4代母Quillはマルゼンスキーの母シルを産んでいますね。他にも、母系からはシルクフェイマスなどが出ています。

母父Awesome of Courseは重賞勝ちのない二流馬で、母が唯一の代表産駒という感じですが、父系としてはもちろん特に母父として日本競馬と、中でもディープと相性のいいデピュティミニスター系というのがキモ。
Awesome of Courseは他にもディープと相性のよいブラッシンググルーム、リファール持ちですね。また、3代母父Vaguely Nobleもディープとの相性が良好ですね。米国血統一辺倒でないあたり、母の配合は芝でもやれそうな雰囲気です。
一方で、母自身は淡泊なGone Westを経由したミスプロクロスも持っていてここはディープとの相性が保証できません。
Awesome of Courseの持つ頑強さ、豊富な筋肉を与える血がどれだけ上手くミスプロクロスを中和できているかがポイントでしょうか。

馬主さんは「日本ダービーを目指す」と話し、アドバイス役を務めていた友道調教師は「マカヒキに似ている」というコメントを残しているように、期待度はかなりのようです。
ここ10年の最高額落札馬で重賞を勝っているのはトーセンレーヴとトーセンスターダムのみという状況ですが、果たしてこの馬はそれを覆すことができるでしょうか。


2頭目の高額落札馬はシャンパンドーロの2015(牡)、こちらもディープインパクト産駒となっています。
昨年も高額でディープ産駒を競り落とした新興馬主の(株)キーファーズが2億3500万円で落札。

この馬の母はアメリカでエイコーンS、テストSと牝馬GⅠを2勝していて、半弟Ruler On Iceも米クラシック・ベルモントSを勝利。
またこの馬のTapit産駒の半兄フォギーナイトは昨年のセレクトセールで2億3000万円で落札されているという2億円兄弟です。

母父は牝馬ながらエクリプス賞年度代表馬となったRachel Alexandraを輩出したMedaglia d'Oro、母母父がアリダー系Saratoga Six。そしてノーザンダンサー4×5、トムフール5×5、母方にボールドルーラークロスを内包…ということで、母はコテコテの米国血統馬。
ただミスプロのように柔らかさを与える血ではなく、パワフルさがウリの米国血統がメインなので、ディープとは相性が悪くないハズ。
そして本馬の配合で言えば、ノーザンダンサーの5×5とヘイロー≒Sir Ivorの3・5×5からなるAlzao≒El Pradoの3×3相似クロスがメインになっています。
Alzao≒El Pradoの相似クロス持ちは、今年2戦2勝で戦線離脱してしまった自分の指名馬ジークカイザーがいます。
まだ結果は出ていない配合ですが、個人的には期待度高いんですよね…。


2016年07月10日

さて、今シーズンもやっていきますこの企画。
その月にデビューし勝ち上がった2歳馬にレースの勝ちっぷり等から勝手に(笑)星☆を付け、上位の馬の血統・プロフィールについて確認していきます。
あくまで独断ですので、自分の指名馬だったりしたら微妙に加点があるかも(笑)。
発表するのは☆6(2勝目も狙えるかな?というランク)以上の評価の馬達。☆7なら重賞でも戦えるかな?というレベル。
昨年はいきなり☆8評価を得た馬はいませんでしたが、唯一☆7.5を付け、デビュー戦では最高評価を与えたマカヒキが見事にダービーを制してくれました。(当時の記事)
 
果たしてどんな素質馬が出てきたのか?さっそく見ていきましょう。
まずは☆6(.5含む)評価の馬達から。

マイネルバールマン    6月4日   東京芝1400 新馬   ☆6
レッドラシーマ        6月4日   阪神芝1600 新馬   ☆6
アンジュシャルマン    6月5日   阪神芝1400 新馬   ☆6
イブキ                6月12日  東京芝1800 新馬   ☆6
ホットセット          6月18日  東京芝1400 未勝利 ☆6
サトノクロノス        6月19日  東京芝1600 新馬   ☆6
アエロリット          6月19日  東京芝1400 新馬   ☆6
エントリーチケット    6月19日  阪神芝1600 新馬   ☆6
ブレスジャーニー      6月25日  東京芝1600 未勝利 ☆6
アンバーミニー        6月26日  阪神芝1800 新馬   ☆6.5
レヴァンテライオン    6月26日  函館芝1200 新馬   ☆6.5

今期最初の新馬戦を制したレッドラシーマは、POG本などでも名前が出ていたクロフネ産駒。
母は6勝馬のアドマイヤリッチ、半姉レッドオリヴィアは4勝、半兄レッドソロモンはOP若葉Sを含む3勝をあげています。
血統的にはフサイチリシャールと同じ母父サンデー×母母父ミスプロの配合型に、好相性のニジンスキー持ち(父方のBlue Grai、ロベルトとBull Pageが脈絡)。
芝でも走れるクロフネ産駒ということで、次走は札幌2歳Sを目指すそうです。

イブキは評判馬相手の芝1800m戦を勝利。
生産は日高の岩見牧場、調教師は若手の奥村師という目立たないプロフィールながらも、新種牡馬である父ルーラーシップに産駒初勝利をプレゼントしました。
配合は5代アウトクロスですが、父方のラストタイクーンと母方のSlew o' GoldがナスキロとBuckpasserで脈絡。また、父方のトニービンと母方のアグネスフローラがハイペリオンやナスルーラで脈絡…と、うまく父の血統のキモを抑えているんじゃないでしょうか。次走は新潟2歳Sと札幌2歳Sの両睨みとのこと。

サトノクロノスは、この世代のディープ産駒の初勝利を収めました。
昨日も書きましたが、この時期から池江厩舎がバンバン新馬戦を使ってくるというのは今後のトレンドを占う上で一つの指針になるかも知れません。
母トゥーアイテムリミットはアメリカでGⅡブラックアイドスーザンSなど重賞2勝。
母はトワイニング(ミスプロ系)×Caveat(ボールドルーラー系)というバリバリの米国血統。持っているクロスもWar Admiralにターントゥ、リボーですから米パワー優勢という感じ。
ディープと相性のいい血はあまりなく、自身ターントゥの5×5持ちと柔らかさを強める血が多く欧州血統が少ないので、上のクラスにいって底力が問われた場合に真価が問われそうですね。
次走は中京2歳Sを予定とのこと。

ダイワメジャー産駒のアンバーミニーは、オトコ馬相手の芝1800m戦で2番手追走から直線抜け出し3馬身差勝利と、見事な勝ち方でした。
母ラブームはドイツ産馬でGⅢフィユドレール賞など重賞2勝。ディープ産駒の兄と姉はともに1勝どまりですが、この馬はきょうだい超えをしそうな雰囲気があります。
ダイワメジャー産駒の好配合ポイントはハイペリオン濃い目しかおさえてはいませんが、サドラーズウェルズ持ちのダイワメジャー産駒といえばメジャーエンブレムと共通していて、今後のトレンドになるかも。
やや頭の高い走法で距離に限界はありそうですが、マイル戦線ならOPでも勝負になるんじゃないでしょうか。

レヴァンテライオンは函館芝1200m戦を差し切り勝ち。直線を向いたときはインの4番手に閉じ込められていて先頭とは4馬身程度の差がありましたが、残り100mで外に出すと凄い脚で前を捉えました。最後の脚を考えるとかなり強い勝ち方だったんじゃないでしょうか。
父は昨年の米3冠馬American Pharoahを輩出したPioneerof the Nile、母父GhostzapperにIn Realityの5×5クロス持ち。また、父方のToussaudと母方のGhostzapperが相似な血の組み合わせ(ノーザンダンサー、In Reality、トムフール)になっています。
ミスプロクロス×ロベルトの組み合わせやボールドルーラークロスなど基本的にはダート血統なんですが、バリバリの米国血統ではなく意外に欧州血統もバランスよく配置されていて、奥行きがある配合ですね。
次走は函館2歳Sとクローバー賞を両睨みとのこと。

そして6月勝ち上がった馬で唯一☆7を獲得したのは、次の馬です!

モンドキャンノ        6月19日  函館芝1200 新馬   ☆7

この評価はモンドキャンノが自分の身内POG指名馬ということもありやや甘めの評価かも知れません(笑)。
ただ、実際レースでは3番手で折り合い、直線を向くと楽に逃げた2着馬を余裕の手応えで交わしてゴールとなかなか強い勝ち方で、勝ち時計は開幕週の時計の出やすい馬場とは言えレコードにコンマ1秒差の1:09.4。
3着馬フクノクオリアと4着馬ラッシュアウトが次走の未勝利でワンツー、当時10番人気の低評価だった2着のドゥモワゼルも昨日の未勝利戦を4馬身差の快勝ですから、レースレベルも高いんじゃないでしょうか。
プロフィール等は先日の指名馬レビューで触れているのでそちらを読んでいただければ。
次走は函館2歳Sを予定していますが、ここでもいいところがありそうで楽しみですね。

以上12頭の6月勝ち上がり馬を評価しましたが、現時点でいきなりGⅠでも好勝負!と思わせる馬はさすがにいませんでした。ただ、2歳馬はこれから成長してきますからね。
昨年6月に勝ち上がったメジャーエンブレムも、その当時はあそこまで強くなるとは思いませんでしたから…。

次回更新ですが、明日と明後日にかけて行われる日本最大のサラブレッドせり市、セレクトセール2016の高額馬レビューをしていこうかと思っています。
今年のダービーでもセレクトセール出身馬サトノダイヤモンド(セレクトセール2014・2億3000万円落札)が2着したように、今やこのセールを語らずしてPOGは語れない!と言ってもいいほど。
昨年は1歳馬で8頭、当歳馬で7頭の億超え馬が登場しましたが、今年もディープ産駒の良血馬が多数上場されており、昨年を超えるかも!?馬主さんたちの熱いバトルに注目です。


2016年07月09日

前回更新からかなり間が空いてしまいました。。。ドラフトでかなり力を使い果たして燃え尽き症候群のようになっていたのと、まだ2歳戦線はOP戦も始まらず個人的に盛り上がりに欠ける…というのをいいことに飲み会に勤しんでいたんですが(笑)、そろそろ更新ペースを元に戻していこうかなと思います。

今回の更新は前回の予告通り日刊競馬POG2016-2017の指名馬レビューです。指名馬は以下の10頭。

トゥザクラウン ★看板馬
アドミラブル
フローレスマジック
オンリートゥモロー
ラボーナ
アドマイヤラッシュ
コケレールの2014
グラニーズチップス
サトノグラン
ヘリファルテ

身内POGと共通で指名した馬はトゥザクラウン、アドミラブル、グラニーズチップス、サトノグランの4頭です。
この馬達のレビューは前回記事に記載したので割愛。
そして、過去にレビュー済みの馬たちは以下の記事をどうぞ。


で、今日は残り3頭の馬達のレビューを改めてやっていきます。

ますは新種牡馬ルーラーシップ産駒のラボーナ
この馬は身内POGでも取りたかったんですが早々に消えてしました。日刊競馬POGの指名馬ランキングでも7位に入っているように、かなりの人気馬です。
母ハッピーパスは初仔ラヴェルソナタが10歳時の産駒と、初期は不受胎が続いたようですが牧場関係者の努力の甲斐あって以降は重賞2勝の半兄コディーノ、今年のオークス2着の半姉チェッキーノなど活躍馬を次々輩出しています。
キンカメとの相性がバツグンなので、その仔ルーラーシップとの相性も保証されています。

キンカメ産駒の好相性パターンをなぞると、「ハイペリオン×Lady Josephineの組み合わせのクロス持ち」がまずあります。
この馬は2代母ハッピートレイルズがフォルリ、Abernant、さらに似た血統構成のCourt Martialと3本の血脈を持ちます。父のルーラーシップもトニービンを通じてHornbeamとPriddy Fairが脈絡しますから、かなり強力に血が結びついていると言えます。
また、キンカメ産駒の好相性パターンは「母がハイペリオンの濃い血を持つ」というものもありますが、母は上記の血に加えAureoleも持っていますからこれもクリアしていますね。
唯一、キンカメ産駒が東京など直線の長いコースの適性を強化する「ラストタイクーンの強化」はないんですが、ルーラーシップ×母父サンデーサイレンスという配合は東京コースでも強かったドゥラメンテと3/4同血ということを考慮すると、そこまでの懸念材料にはならないのかとも思います。

母16歳時とやや高齢の産駒ではありますが、上記したようにそもそも母はある程度年がいってから子供を産み始めこの馬が7番仔ですから、活力は残っていると思いますね。
牧場の評価も高く、すでに入厩し札幌でのデビューが予定されているとのこと。半兄コディーノ同様、札幌での新馬勝ちなるか注目です。

次に紹介するのはアドマイヤラッシュ。こちらはディープ産駒ですね。
母アドマイヤマリンは2勝の下級条件馬でしたが、繁殖牝馬となってからはずっとディープインパクトを配合され続け、初仔のアドマイヤスターは1勝馬ですが、1つ上の兄アドマイヤダイオウは若葉Sを勝ち皐月賞に出走しました(9着)。

血統的には5代アウトクロス馬ですが、ディープ×クロフネは16頭が出走し11頭が勝ち上がりというアベレージの高い配合。そもそもディープはクロフネの父フレンチデピュティと相性がいいですからね。
2代母ベルベットローブはGone West×Slewpy×Verbatim×One Sumでナスキロが4本と濃く、かつアメリカンで淡泊な面があるのでそこまで大物感は感じはないんですが(笑)、そこはクロフネのパワーで相殺し確実に1勝、あわよくば2勝・3勝としてくれればうれしいかなと。
管理予定となっている友道師は今年全兄アドマイヤダイオウはもちろんディープ×フレンチデピュティのマカヒキでダービーを制した、この配合が得意な調教師さんというのも大きいですね。

最後に紹介するのはドラフトでも人気していた、ヘリファルテです。
すでにプロフィールはこれまでの記事でも紹介してますが、サンデーレーシング3番目の高額募集馬、ディープ産駒、堀厩舎というスキのない馬です。

母は現役時代11戦4勝、英GⅠサンチャリオットSとカナダGⅠEPテイラーSを連勝し4歳時に欧州の芝マイル~中距離戦線で堅実な成績を残しました。
母父Mediceanはマキャベリアン産駒で、母同様欧州の芝マイル~中距離戦線でGⅠを2勝。超大物の産駒はいないものの、シユーマと同じ母父デインヒルの牝馬NanninaがイギリスでマイルGⅠを2勝。Mediceanは母父Storm Birdで、ノーザンダンサークロスが発生するパターンの配合で活躍馬を出しています。
で、母母Sichillaはその父がデインヒルですが、母母父がConquistador Cieloということで母父・母母ともにノーザンダンサーとミスタープロスペクターの父母相似配合になっており、母はミスプロ3×4とノーザンダンサー4×4クロスとニアークティック5×5・5クロス持ち。
さらにMachiavellian、ノーザンダンサー、デインヒルともに同じ牝系の出身で、名牝Natalmaの5・5×5・5クロスも発生と、ここが母の能力の源でしょうか。

この馬の配合で言うと、個人的にはディープに合わないと思っている母がミスプロクロス持ちのパターンなんですが、ミスプロの一方がディープと相性のいいMachiavellianを経由していることがややプラスポイントかなと。
また、母がミスプロクロス持ちはディープに柔らかさをさらにもたらすことが良くないと思っているんですが、そこはパワーと頑強さの塊である2代母父デインヒルが相殺してくれれば…というのがあります。

初仔ということもありやや冒険した感はありますが、あとは、昨年のリーディングトレーナーである堀調教師の手腕にお任せ。毎年クラシック戦線に管理馬を送り込む師であれば、多少の配合的マイナス点は関係ないと勝手に思ってます(笑)。

簡単ですが、今年の指名馬レビューはこんなところでしょうか。昨期の成績は1985名中1258位と、ダメダメな順位でした。
今年の参加者は2432名となんと昨期より450名以上増えている(!)んですが、最低昨期以上の順位を目指していきたいところです。

さて、明日はすでに開催が終わった3回東京・阪神と1回函館開催の4日間を含め、昨年独断的・2016年6月勝ち上がりの2歳馬ランキングを発表したいと思います。
近年2歳重賞の増設で早期に賞金を稼ぐことがクラシック戦線に乗る上で非常に重要になってきていて、今年は特にあの池江厩舎でも早期始動が目立っています。果たしてGⅠを狙えるような馬はいるのか!?